没落人生から脱出します!

 ついた先はブレイクの屋敷だ。
 揃って迎えてくれる使用人たち一人ひとりに、エリシュカは笑顔でただいまを言う。

「お帰り、エリシュカ」

 駆け寄ってきたのはブレイクだ。いつもの悠々とした態度と違い、どこか浮かれているようだ。

「おいで、今ならレオナが起きてる」
「叔母様が?」

 エリシュカがブレイクの屋敷にいる間、レオナと対面できたのは彼女が寝ているときだけだ。
 起きている時間もあったはずだが、ブレイクはその時間に他人を部屋にいれたがらなかった。彼にとっても、大事な妻との貴重な逢瀬の時間だからだ。

「い、いいんですか? そんな貴重な時間に」
「レオナも君を待ってる。自分を守るために、自らを差し出そうとしてくれたって知って、お礼がしたいって」

 引っ張られるまま、エリシュカはブレイクの後を走る。
 二階の奥の部屋。レオナを守る大切な部屋に、エリシュカは足を踏み入れる。

「入るよ、レオナ」

 中に入ってすぐに、横たわってこちらを見ているレオナが目に飛び込んできた。
 今までは閉じられていた瞳は、綺麗な空の色だった。宝石で言ったら、アクアマリンのような色だ。

「あなたがエリシュカちゃんね」

 レオナはうれしそうに顔をほころばせると、ゆっくりと手を伸ばした。

「握ってあげて」

 ブレイクに促され、エリシュカはベッド脇まで近づくと彼女の手を握った。
 枯れ木のように細い腕だ。力をこめたら折れてしまうのではないかと心配になる。

「はじめまして。叔母様」
「レオナと呼んで。ブレイクから話を聞いて、ずっと会いたいと思っていたの。ありがとう。あなたのアイデアのおかげで、私は命を繋いでいられて。お義兄さまの暴挙にも立ち向かってくれたって聞いたわ」

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