没落人生から脱出します!
「ありがとう、叔父様。じゃあやっぱり、モーズレイさんの商会は叔父様の出資で?」
「あの案を考え出したのは、リアンだよ。いずれ独り立ちするために、リアンはずっと資金を貯めていたんだ。それでも、山林を買い取るほどの金額は無い。だから僕が出資した。リアンなら倍にして返してくれると信じているしね。モーズレイ氏を共同経営者に巻き込んだのは、単に兄さんの目を誤魔化す為じゃないかな。リアンの名前だと、意地でも契約しないだろうし。モーズレイ氏は見かけだけはいかつくて、人から侮られることもないから」
「そうですね。運よく縁談が流れたのも幸いでした」
「あ、それは僕だ。フレディ君がテスト休暇で魔道具のメンテナンスを受けに戻って来たときにバンクス男爵にも会ったから、噂を流すように頼んでみたんだ。バルウィーン前男爵は気にしないだろうけど、爵位を受け継いだ息子の方は気弱だし、奥方に頭が上がらないって噂を聞いたことがあったから、もしかしたらうまくいくんじゃないかと思って」

 それでか、とエリシュカは納得する。

「私、みんなに助けてもらったんですね」
「そうだね。でも、それは今まで、君が皆を助けようとしてきたからだ」

 エリシュカはきょとんとして、ブレイクを見上げる。彼は優しく微笑んだ。

「他人のために一生懸命になれる君だからこそ、助けてくれる人間がたくさんいるんだよ」

 互いに歩み寄ることが、家族でいられる秘訣だとリアンは言った。
 そうかもしれないと今は思う。父や母がもう少しエリシュカの話に耳を傾けてくれていたら、エリシュカだってあの場所で頑張り続けただろう。家のための政略結婚も、甘んじて受けたと思う。そうしたら、今とは違った未来が描かれていたかもしれない。

「そういえば、その山のことで、提案があるんです」
「え?」
「まだ検証もしていない。ただの想像です。それでも、レオナさんを助けることに繋がるかもしれないので、試してみる価値はあるんじゃないかと思ってます」

 そうして、エリシュカの提案を聞いて、ブレイクは商売人としての顔でにやりと笑った。

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