没落人生から脱出します!
「お前のイメージと合ってるか? 火魔法と風魔法を組み合わせた機構を入れていて、魔力を注ぐと、机の下に熱が広がる。布の表面にも風魔法がかかっていて、効率的に熱風を巡回させるようになっている」

 どうしてリアンがコタツを知っているのか……と記憶を巡らせて、他愛もない会話を思い出す。

『コタツいいんだよぉ。あったかくてねぇ』

 七歳のエリシュカが、夢の世界の道具として話したことがあった。
 あの時リアンは、『俺がいつか作ってあげますね』と言ったのだ。そんなの、ただの社交辞令だと思っていたのに。
 鼻のあたりがツンとした。子供の頃の小さな約束を、リアンは忘れていなかったのだ。

「……覚えていてくれたんですね」
「全部覚えている。お嬢……エリシュカが話した道具は、みんな便利で面白そうで。俺は小さなころから、俺が全部作ってお嬢に見せてやるんだって思ってた」

 そしてそれを、実現してくれたのだ。
 込みあがってくる涙を堪えるのに、精いっぱいになる。誰もがエリシュカの言葉を無視する中で、いつもリアンだけは、ちゃんと聞いて、拾い上げてくれる。

「うれしいです。つけてみてもいいですか」
「もちろん」

 リアンが魔力を注ぎ、椅子を引いてくれる。エリシュカはハンカチで目元を押さえながら、座った。
 優しい温風が、テーブルの下を巡回している。冷え性のエリシュカの足先も、じわじわと温められていく。
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