没落人生から脱出します!
「当然の話だ。許可を取らずに作ってしまった『魔女の箒』の魔道具も、元はエリシュカの提案だ。お前の反対があれば販売差し止めする」
「反対なんてするわけないじゃないですか。私があの道具のアイデアをリアンに話したのは、便利な道具をみんなに知ってもらいたかったからですし。作ってくれてどれほどうれしかったか」

 エリシュカは慌てて言う。ほらみたことかというようにブレイクがリアンをちらりと見て、リアンはまだ不満そうに頷いた。

「エリシュカがそう言うことくらいは分かっている。ただ、自覚はして欲しい。お前にはその権利がある。搾取されてあたり前と思うな。お前自身にはそれだけの価値があるんだと、ちゃんと理解してほしい。この先、キンスキー伯爵がお前のものを家のものだと主張してきたとき、ちゃんと戦う意識を持ってほしい」

 それにはハッとさせられた。エリシュカ自身に、搾取される側の危機感がないことをリアンは心配しているのだ。目が覚めたような気がする。伯爵家で説明されたような、ただ木こりの管理をするために雇われたわけじゃないのだ。リアンは、今回のことでエリシュカ自身の意識を変えようとしている。

「……はい」

 真顔になって返事をすれば、リアンはようやく笑ってくれた。

「じゃあ、コタツの設計書は俺とエリシュカの名前入りで作成し、明日までに、必要な部品表も作っておく。明日は買い取った山に行こうと思う。モーズレイとエリシュカは木こりたちと、部品表を基に必要な木材の本数や、素材について相談してくれないか」
「分かった」
「分かりました」
「俺は切り出した木材の運搬や加工の相談をする」

 とりあえずの方針が決まったかと思ったとき、ブレイクが小さく手を上げた。

「僕も検証したいことがあるから一緒に行くよ。木材になる前の状態の木をうまく使えないかどうか、考えてみたいんだ」

 ブレイクはエリシュカに片目をつぶって見せ、エリシュカは大きく頷いた。

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