没落人生から脱出します!
 久しぶりの『魔女の箒』だが、外観や雰囲気は何も変わっていなかった。

「いらっしゃいま……エリシュカ! やっと帰ってきたのね!」

 リーディエがエリシュカに気づき、飛びついてくる。普段はクールな彼女のそんな姿を見て驚いている薄茶の髪の女性が、おそらくヴィクトルの妹なのだろう。

「リーディエさん。ただいまです」

「もう心配ないの? なんか痩せたんじゃない?」
「大丈夫ですよ。今は叔父様のお屋敷にいます」

 リーディエと話している間に、奥からヴィクトルが出てきた。

「おお、エリシュカ! リアンが着いてるんだから大丈夫だろうとは思ったが、良かったな」
「はい! ヴィクトルさんは店長さんになったんですってね」
「そう。どう? 貫禄ある?」

 態度の変わらないヴィクトルにもまたホッとする。ヴィクトルの妹も紹介して貰い、しばらくは三人で歓談する。

「ヴィクトル、店舗の改装の話だけど」

 リアンがヴィクトルに手招きする。
 いずれはレイトン商会の商品も『魔女の箒』に卸す予定らしく、大型商品となるため、見本を展示して注文を受けるようにするなど、店舗での展示も工夫するらしい。

 仕事の話を少しと、世間話を少しして、店を出た。
 再び馬車に乗り込む際に、リアンがまたもや過保護なほどのエスコートを見せるので、扉が閉まる直前に、ニヤニヤと微笑むリーディエと目が合ってしまった。
 恥ずかしくてたまらなくて、エリシュカはしばし顔を押さえたまま悶えていた。

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