没落人生から脱出します!
 一通り話を終え、現場の確認に山に入ると、ブレイクが数名の木こりをつれて散策していた。

「やあ、エリシュカ。たしかに君の言う通り、ここに居ると力がみなぎるような気がするよ」

 上を見上げれば、木々が枝を揺らし、日光をやわらげてくれているのが分かる。風は爽やかで、踏みしめる土からでさえも英気をもらえるような感覚がある。

「この方たちからも聞いていたんだけど、木こりたちは皆健康で、五十歳を過ぎても元気に働いているそうだよ」
「はは。ブレイク坊ちゃんたちは机にかじりつきすぎなんですよ。こうやって体を動かしていりゃ、健康でいられますとも」

 初老の男性ががはは、と笑う。どうやら、ブレイクが子供のときにも働いていた木こりのようだ。

「こんな風に木々の茂った場所に、保養施設を作るといいかもしれませんね。森の空気を十分に吸えるような」
「そうだね。試しにここにレオナも連れてこようかな」
「ええ。検証もしないといけませんしね」

 エリシュカとブレイクの会話を聞いていた木こりは、少し寂しそうに笑う。

「ブレイク坊ちゃんやエリシュカお嬢さんが、後継者だったらどんなに良かったですかね」
「え?」
「俺らは、領土のために必死で働いてきたつもりですよ。だが、木材の需要が無くなると、伯爵様は簡単にこの土地を売ってしまった。あなた方が事業に関わってくれているうちはいいですが、経営者が変われば、いつ何時仕事を切られてもおかしくない。俺らが税金を納めているのはここの経営者ではありませんからね。切られても文句は言えない。領内に仕事がないってのは、それくらい不安定なことなんです」
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