没落人生から脱出します!
 エリシュカの営業は、誠実かつ丁寧で、その話やすさから彼女が貴族の娘だなんて誰も思っていない。
 エリシュカは、キンスキー伯爵家にいた時より、自分が自分らしくしていられると感じている。

(私、なんだかんだと接客が好きなんだなぁ)

 小さなころから、どこにいても中途半端な気持ちだったが、ようやく落ち着けるところに落ち着いた気がする。

 結局、食堂は三席分のコタツ席と、風よけ衝立を購入し、そこに座って効果を実感したお客たちが、家庭用にと買い込んでいくこととなる。

 冬が終わるころまでに、レイトン商会と販売店である『魔女の箒』の収益はうなぎのぼりになっていた。
 それがおもしろくないのはキンスキー伯爵である。

「くそ、エリシュカの奴、完全にリアンに騙されおって」

 レイトン商会に売った山林は、保有者の変更が国に報告されており、そこに関わる国税もレイトン商会が支払っている。
 当初、勝手に売る判断をしたことに対し、キンスキー伯爵に苦言を呈していた国王は、レイトン商会が魔道家具で収益を上げているのを見ると、手のひらを返したように喜んだ。
 伯爵に山を遊ばせておいて、補助金をとせびられるよりも、土地税の支払いはたしかで、更に商会としても税金を支払ってくれる方が言いに決まっている。
 そんなわけで、王家の税務担当者たちの中では、レイトン商会の評価が上がっているのに対し、キンスキー伯爵に対しては評価が下がっていた。
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