没落人生から脱出します!

「なぜエリシュカは私に報告に来ないのだ」

 管理をするために派遣したエリシュカを、伯爵は自分の持ち駒だと思っていた。
 何度も家に戻り、報告をするよう迫ったが、エリシュカは来ず、ついに【もう屋敷には戻りません。勘当してほしい】という内容の手紙をよこした。
 エリシュカはブレイクの屋敷にいるということなので、実際会いにも行ったが、使用人に追い返される。明らかに以前よりもガードが固い。

「旦那様、お手紙が届いています」
「ああ」

 使用人から手紙を受け取り確認すると、マクシムとラドミールの学費の請求だ。
 王都の名門学校に入れたため、学費が高い。しかし、ここに通わせれば、王侯貴族の子息とのつながりができる。伯爵以上の家柄ならば、無理をしてでも入れたい学校だ。

(くそ。よりによって双子なのが痛い。跡継ぎに向いているのはマクシムだから、ラドミールは退学させてもいいか……?)

 しかし、跡継ぎではない男には、息子のいない家の、貴族令嬢の婿としての需要がある。もしそれでうまく他家の後継ぎのポジションにもぐりこめれば、御の字だ。それには教育を受けさせておかなければならないだろう。

「エリシュカの給金から支払えるかと思ったのだが、これでは駄目だ。……であれば、そうだな。儲かっているのだろうし、木こりたちから頂くとするか」

 キンスキー伯爵はにやりと笑うと、すぐさま使用人を呼び、文書をしたため始めた。

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