没落人生から脱出します!
木こりたちの話を聞いた翌日、エリシュカとモーズレイはブレイクとリアンにも集まってもらって報告をした。
ふたりは顔を見合わせ、難色を示した。
「ここに住みたいって?」
「一商会が土地管理者になっているのも異例なのに、領民まで抱え込んだら、さすがにいい顔はしないんじゃないか?」
それでは、土地持ちの貴族と同じになってしまう。貴族制度を重視するこの国では反感を買いかねない。
「僕たちは貴族相手に商売をしているからね。あんまり心証を悪くするのはなぁ……」
ブレイクが顎に手を当てて考え込む。すると扉がノックされ、彼の妻であるレオナが入ってきた。
「皆様、お茶が入りました」
「叔母様! 手伝います」
「いいのよ、エリシュカちゃん。私にも何かさせてちょうだい」
この冬の間に、ブレイクは植物が生成する魔力を蓄えるための魔道具を開発していた。
被験体となっているのはレオナで、結果は良好だと言える。
最初はほとんど起きていることのなかったレオナのために、ブレイクはまず、森の中に小さな家を建て、レオナのベッドをそこに移した。
定期的に換気をし、森の空気をふんだんに入れ込む。すると、レオナは少しずつ、目を開けている時間が長くなっていったのだ。
ブレイクもその家に滞在しながら、効果的に大気中の魔力を取り込むための方法を考え、その機構を作った。
森の空気から魔力だけを濾し取り、魔力の濃い空気を作り、さらに水に溶け込ませる魔道具を作ったのだ。