没落人生から脱出します!
「そろそろ本格的に結婚の話を進めたい。随分資金もたまったしな」
「は、はい」

 指を撫でられ、手が合わさる。エリシュカはゆっくりと目を閉じた。

「……ん」

 唇が重なると、つい声が漏れてしまった。リアンが手をエリシュカの背中に回したので、エリシュカは動けなくなってしまう。
 そのうちに、キスは少し深いものになり、エリシュカはパニックになる。

(どうしよう。こんなの、前世の記憶でもなかった)
「……んん、やっ」

 少し抵抗するそぶりを見せると、リアンはハッとしたように体を離す。

「わ、悪い」
「違うんです。あの、あの、……恥ずかしくて」

 顔を押さえたままそういうと、リアンは膝からエリシュカを下ろし、テーブルの冷めてしまったコーヒーを飲みほした。

「今はこれでやめるけど、結婚したら我慢しないからな」
「我慢……しているんですか?」
「好きな女とふたりでいて、俺くらい我慢している男はいないんじゃないか?」

 今度は茶化すように言われたので、エリシュカは思わず笑った。

「いつしましょうか。結婚」
「そうだな。俺は本当は、教会で誓いを立てるだけでもいいと思っているんだが」
「あら駄目よ」

 明るい声が後ろからして、エリシュカとリアンは驚いて振り返る。そこには、ブレイクとレオナが立っていた。

「ごめんなさいね。覗きみたいになっちゃって」
「みたいじゃなくて、覗きですよ」

 リアンのすねた声にブレイクが笑い出す。

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