没落人生から脱出します!
 木で作ってある小さなネズミの人形だ。尻尾の紐を引っ張ると、カタカタ音を立てて前に動く。くまなく見ると、お腹のところに商会の名前が彫り込まれていた。『ブレイク魔道具商会』と書かれている。

「魔道具?」

 ただの仕掛け人形だと思っていたが、これは魔道具だったのか。
 試しに魔力を注いでみると、ネズミはその目玉をぎょろりと動かした。先ほどまで赤かった瞳が青色に光っている。

「ひっ」
『ジー、ジー、通話、カノウ。オツナギシマス』
「……しゃべった!」

 エリシュカは驚きで息を飲む。そのまま見つめていると、ネズミの目の色が緑色に変わった。

『え? ……繋がったの? まさか、エリシュカかい?』

 今度は流ちょうな大人の声がした。たまに途切れるものの、鮮明な声がする。

(まるで電話みたい……!)

 電話とは、エリシュカがたまに夢で見るニホンにあった、遠くの人とお話ができる便利な道具だ。が、ネズミ型はしていなかった。もっと、板みたいな形をしていたはずだ。

『おーい。あれ、繋がってないのか?』
「つ、繋がってます! 叔父様ですか?」

 エリシュカは慌てて返事をした。

『エリシュカだろ? この仕掛けに気づくとしたら、三人の中でエリシュカだと思ってたんだ。ずいぶん時間がかかったね』

 本当に叔父だと分かり、エリシュカはホッとした。
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