没落人生から脱出します!
 つまり、国王は、キンスキー伯爵を追放するから後釜として伯爵位を継承せよと言っているのだ。

「しかし、兄には跡継ぎである子供たちもおります。それに私も十年以上前に伯爵家を出た身ですし……」
「あの双子は駄目だ!」

 バンと強くこぶしを叩きつけるのは、アルダーソン侯爵だ。息子たちまで目を付けられるとは、いったい何をしたというのだろう。
 宰相はアルダーソン侯爵をなだめつつ、何かをたくらんでいるような暗い微笑みを浮かべる。

「まあ、ここだけの話ですが、我々はキンスキー伯爵領を、現伯爵に任せておけないと考えております。豊富な森林資源をレイトン商会に売り払い、挙句、支援金がないと維持できないなどというのは、責任転嫁も甚だしい」
「それは……」

 魔道具によって森林の地価が上がったのであり、その前は森林の地価は下がる一方だったのだから、一概に伯爵のせいとばかりは言えない。……が、ここに揃っている三名がそのことに気づいていないはずはない。要はどんな理由をつけても、キンスキー伯爵の爵位を取り消したいのだ。

「はあ……そうですね」
「なんだ、気乗りのしない返事だな。君にとっても悪い話ではないだろう? 伯爵は弟である君にこれまで何の援助もしてくれば勝ったそうじゃないか。追い落として、自らが伯爵になれるのだぞ?」

 ブレイクはしばらく考え、ひとつの提案をした。国王も宰相もアルダーソン侯爵も最初は眉をひそめたが、やがて納得したように頷いた。

「いいだろう。それでいこう」

 国王がそう言い、この場での話し合いは終わった。


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