没落人生から脱出します!
 ブレイクに言われ、エリシュカは翌日、リアンのもとを訪れた。
 リアンはモーズレイと共にレイトン商会の工房で魔道家具の作成中だ。エリシュカが顔を出すと、モーズレイがにやにやしながら、「お前は休憩していいぞ」と言って事務作業用の個室へと追いやられた。なんだかんだとふたりは気が合うようだ。

「王都へ?」
「ええ。叔父様、叙爵されるんですって」

 リアンはすっと真顔になる。

「……で、男爵? 高魔力水の評価にしちゃ、低くないか?」
「そうですか? でも、一商人が爵位をもらうのってすごいことじゃないですか?」
「まあ、そうだが。だが、徳になることと言えば、貴族との顔つなぎができるようになるってだけで、元が伯爵家出身のブレイク様は、そこまで変わらないだろうしな」
「そうですか」

 リアンが思いのほか喜んでいないので、エリシュカはなんとなくしょげてしまう。それを見たリアンはバツが悪くなったのか、明るい声を出した。

「まあでも、めでたい話か! でもなんで俺たちまで?」
「一応功労者だからってことらしいです。叔父様、王都でおいしいものを食べさせてくれるって言ってましたよ」
「そうか、じゃあたらふく食わしてもらうか!」

 そのあとは、二人で新しい道具の話をした。
 今度作ろうと思っているのは、冷風機だ。冬を温かくした後は、夏を涼しく。目標を決めて、リアンとあれこれ開発している時間が、エリシュカは一番楽しい。

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