没落人生から脱出します!
「母上、さすがにそれは……」
マクシムがやんわりと口を挟もうとしたが、母は貼り付けたような笑顔で続ける。
「まさかエリシュカが爵位を受け継ぐとは思わなかったけれど、王命だもの、仕方ないわ。仲良くやっていきましょうね」
エリシュカは、すっと血が下がっていくのを感じた。ここまで、反省も何もないとは思わなかった。これでは、領民の生活を守ることなど、考えてもいないだろう。
「一体何のおつもりですか?」
「え?」
冷たい声に、母親がようやく眉を顰める。
「私は、あなた方にこの屋敷から出る準備をするよう、お伝えしたつもりです。なのに、なんです? この団らんごっこは。私が屋敷にいたとき、一度だってこんな風に私を迎えたことなどないくせに」
「え、エリシュカ?」
「私があなたたちを家族だと思っていたとき、私はいつだってのけ者だった。もう家族だなんて思わないと決めてから、どうしてこんなこと……っ」
これならば、冷たく罵倒された方がましだった。
自分たちがこの屋敷を出たくないから、優しくするだなんて。しかも、そんな見え透いた態度でごまかせると思っているほど、自分が侮られていることが悔しかった。