没落人生から脱出します!
「なんで? どうして? ニホンの道具がここにあるの?」
興奮したエリシュカが、勢いよくガラスにバンと手を着くと、ものすごい音が響き渡った。
「わ、割れてないよね?」
心配して眺めているうちに、中から、早歩きで男の人が出てくる。エリシュカは身構えた。
「ちょっとアンタ、危ないだろう。ガラスが割れたらどうするんだ!」
「すみませんーっ、壊すつもりじゃなくて……」
顔を上げると、そこにいたのは思ったより若い男性だった。ウェーブの栗色髪。こげ茶の瞳。身長は高く、思いきり見上げないと顔が見えない。だが、一度見たら忘れられないような印象があった。切れ長の瞳に、すっと通った鼻。引き締まった口もとからは、意志の強さが感じられる。男らしく頼りがいのありそうな印象だ。エリシュカは一瞬見とれてしまう。
男性は、エリシュカを見ると驚いたように目を見開いた。その顔に、エリシュカは不思議な既視感を覚える。
「……お嬢?」
「誰?」
問いかけると、青年はムッとしたように顔をしかめた。
「覚えてもないのか」
そんなことを言われても、知らないものは知らない。エリシュカは仕方なく自己紹介から始める。
「昔、会ったことがあるのかしら。覚えてなくてごめんなさい。私はエリシュカ・キンスキー。ここに、ブレイク・キンスキーはいるかしら」
「……キンスキー? ここのオーナーは、ブレイク・セフナル様だが」
「セフナル?」
聞いたことのない姓だ。叔父は父の同母の弟のはずだが、母方の姓とも違う。
「と、とにかく、取り次いでいただけますか。エリシュカ・キンスキーが来たと伝えてください」
おずおずとだがはっきり伝えると、男はいぶかし気にエリシュカを見つめた。
「とにかく、中に入ってくれ」
「待って。あなたの名前を聞いていないわ」
青年の背中にそう言うと、彼はビクッと立ち止まった。エリシュカが不安に思うほどの沈黙があったあと、振り向かないまま「リアン」とだけ告げた。
「そう、リアンさん。よろしくお願いします」
「……っ」
舌打ちをされた。なぜ怒られるのか分からず、エリシュカは身をすくめる。
興奮したエリシュカが、勢いよくガラスにバンと手を着くと、ものすごい音が響き渡った。
「わ、割れてないよね?」
心配して眺めているうちに、中から、早歩きで男の人が出てくる。エリシュカは身構えた。
「ちょっとアンタ、危ないだろう。ガラスが割れたらどうするんだ!」
「すみませんーっ、壊すつもりじゃなくて……」
顔を上げると、そこにいたのは思ったより若い男性だった。ウェーブの栗色髪。こげ茶の瞳。身長は高く、思いきり見上げないと顔が見えない。だが、一度見たら忘れられないような印象があった。切れ長の瞳に、すっと通った鼻。引き締まった口もとからは、意志の強さが感じられる。男らしく頼りがいのありそうな印象だ。エリシュカは一瞬見とれてしまう。
男性は、エリシュカを見ると驚いたように目を見開いた。その顔に、エリシュカは不思議な既視感を覚える。
「……お嬢?」
「誰?」
問いかけると、青年はムッとしたように顔をしかめた。
「覚えてもないのか」
そんなことを言われても、知らないものは知らない。エリシュカは仕方なく自己紹介から始める。
「昔、会ったことがあるのかしら。覚えてなくてごめんなさい。私はエリシュカ・キンスキー。ここに、ブレイク・キンスキーはいるかしら」
「……キンスキー? ここのオーナーは、ブレイク・セフナル様だが」
「セフナル?」
聞いたことのない姓だ。叔父は父の同母の弟のはずだが、母方の姓とも違う。
「と、とにかく、取り次いでいただけますか。エリシュカ・キンスキーが来たと伝えてください」
おずおずとだがはっきり伝えると、男はいぶかし気にエリシュカを見つめた。
「とにかく、中に入ってくれ」
「待って。あなたの名前を聞いていないわ」
青年の背中にそう言うと、彼はビクッと立ち止まった。エリシュカが不安に思うほどの沈黙があったあと、振り向かないまま「リアン」とだけ告げた。
「そう、リアンさん。よろしくお願いします」
「……っ」
舌打ちをされた。なぜ怒られるのか分からず、エリシュカは身をすくめる。