没落人生から脱出します!
やがてふたりは庭にある池のほとりにつく。キンスキー伯爵家の庭園は広く、花壇だけではなく雑木林やハーブ園や池もある。ちょっとした公園のようなのだ。
「お嬢が欲しかったのはどんなものなんです?」
エリシュカの座る場所に大判のハンカチを敷き、リアンは彼女をそこに座らせた。そして彼女の膝にフリッターの皿をのせる。エリシュカはフォークを使って上品に口に運んだ。
「こういうんじゃないの。もっと薄くて、パリッとしていて、しょっぱくて、手づかみで食べるのよ」
「薄くってどうやって切るんです? 包丁で?」
「うーん、スライサーとか」
「スライサー?」
オウム返しされ、エリシュカはしばし考える。リアンに分かるように説明するのが難しい。
「薄くて長い刃が、ついているの。このくらいの、板みたいな形で、お芋を動かすと薄く切れるの」
「そんなもの、厨房で見たことが無いですけどね」
「それはそうよ。だってニホンのものだもの」
言ってから、エリシュカは口を押さえる。幼いころから言い続けたせいで、家族も使用人も、エリシュカの言う架空の国の名をと聞くだけで、嫌な顔をするのだ。
しかし、リアンは違った。
「ああ、お嬢がよく話している国ですね。不思議な道具がたくさんあるんですね」
ニホンのことを肯定的に捉えてくれたのは、叔父に続き、リアンがふたり目だ。エリシュカはうれしくなる。
「そうよ。とっても便利なものがいっぱいあるの」
「じゃあ、お嬢の欲しいお芋を作るには、まずそのスライサーがいるんですね」
「うん!」
「きっとみんな、どんなものかわからないんですよ。俺、今度絵に書いてあげます。というわけで! 今日は諦めてこれを食べましょう!」
「お嬢が欲しかったのはどんなものなんです?」
エリシュカの座る場所に大判のハンカチを敷き、リアンは彼女をそこに座らせた。そして彼女の膝にフリッターの皿をのせる。エリシュカはフォークを使って上品に口に運んだ。
「こういうんじゃないの。もっと薄くて、パリッとしていて、しょっぱくて、手づかみで食べるのよ」
「薄くってどうやって切るんです? 包丁で?」
「うーん、スライサーとか」
「スライサー?」
オウム返しされ、エリシュカはしばし考える。リアンに分かるように説明するのが難しい。
「薄くて長い刃が、ついているの。このくらいの、板みたいな形で、お芋を動かすと薄く切れるの」
「そんなもの、厨房で見たことが無いですけどね」
「それはそうよ。だってニホンのものだもの」
言ってから、エリシュカは口を押さえる。幼いころから言い続けたせいで、家族も使用人も、エリシュカの言う架空の国の名をと聞くだけで、嫌な顔をするのだ。
しかし、リアンは違った。
「ああ、お嬢がよく話している国ですね。不思議な道具がたくさんあるんですね」
ニホンのことを肯定的に捉えてくれたのは、叔父に続き、リアンがふたり目だ。エリシュカはうれしくなる。
「そうよ。とっても便利なものがいっぱいあるの」
「じゃあ、お嬢の欲しいお芋を作るには、まずそのスライサーがいるんですね」
「うん!」
「きっとみんな、どんなものかわからないんですよ。俺、今度絵に書いてあげます。というわけで! 今日は諦めてこれを食べましょう!」