没落人生から脱出します!
「でも宿を……」
「では仕方ないな」
エリシュカの言葉をリアンが遮った。
「ここの二階に部屋がある。今日はそこに泊まるといい」
「え……」
「そんなの駄目よー!」
ふたりの会話に割って入ってきたのは、先ほどリーディエと呼ばれた女性店員だ。
「店長、なに考えているんですか! 二階は店長の部屋じゃないですか!」
「部屋はふたつある。俺は作業場の方で寝れば問題ないだろう。なにをいかがわしい想像をしているんだ」
「それでも駄目よー!」
当事者であるエリシュカを前に、リアンとリーディエが揉めだした。
(もしかして、リーディエさんはリアンさんの恋人なのかな? だとしたら、恋人の部屋に別の女が泊まるなんて嫌よね)
邪推するエリシュカは、遠慮がちに口を挟んだ。
「あの、私でしたら、どこか宿にでも」
「アンタみたいな箱入りのお嬢、ひとりで宿をとったらぼったくられるし、食堂で飲んだくれてる男たちにも目をつけられるに決まってるだろ!」
なぜだかいきなり怒られた。先ほど質屋のおじいさんにも似たようなことを言われたことを思えば、賑やかな街だが、治安はあまりよくないようだ。