没落人生から脱出します!
エリシュカは、十分ほど黙って待っていたが、リアンは全然戻ってこない。やがて芋の煮えたようないい香りが漂ってきたので、おそるおそる奥を覗いた。
「あの、リアンさん?」
「なんだ」
店舗の奥には廊下が続いていて、右手側の部屋からリアンの声がする。
どうやらキッチンのようだ。背中を向けていたリアンが、肩越しに振り返る。
「なんだ。まだかかるぞ」
「……ご飯を作ってくれていたのですか」
呆然とその背中に問いかければ、彼はぼそりと言う。
「お嬢には作れないだろう?」
〝お嬢〟という言葉に、エリシュカの胸は不思議な反応を示した。安堵に似た感覚がまずやってきて、すぐに、なにもできないお嬢様だと思われていることへの悔しさが湧き上がる。
エリシュカは後半の反発心に従い、腕まくりをしながらリアンの隣に立った。
「私も手伝います」
「いいよ」
「できます。これでも、料理は毎日しているんです」
自信ありげなエリシュカの発言に、リアンはますます眉を寄せた。
「なにがあった? キンスキー家のお嬢様が、料理だと?」
リアンの言い方が引っかかる。やはり彼は、キンスキー伯爵家のことを知っている。しかも、没落する前の裕福な時代をだ。
「あの、リアンさん?」
「なんだ」
店舗の奥には廊下が続いていて、右手側の部屋からリアンの声がする。
どうやらキッチンのようだ。背中を向けていたリアンが、肩越しに振り返る。
「なんだ。まだかかるぞ」
「……ご飯を作ってくれていたのですか」
呆然とその背中に問いかければ、彼はぼそりと言う。
「お嬢には作れないだろう?」
〝お嬢〟という言葉に、エリシュカの胸は不思議な反応を示した。安堵に似た感覚がまずやってきて、すぐに、なにもできないお嬢様だと思われていることへの悔しさが湧き上がる。
エリシュカは後半の反発心に従い、腕まくりをしながらリアンの隣に立った。
「私も手伝います」
「いいよ」
「できます。これでも、料理は毎日しているんです」
自信ありげなエリシュカの発言に、リアンはますます眉を寄せた。
「なにがあった? キンスキー家のお嬢様が、料理だと?」
リアンの言い方が引っかかる。やはり彼は、キンスキー伯爵家のことを知っている。しかも、没落する前の裕福な時代をだ。