没落人生から脱出します!
「とにかく、今はエリシュカの話だ。たしかに未婚の男女かもしれないけれど、リアンは
僕の姪っ子に手を出すような恩知らずじゃないだろう?」
「どういう脅しですか」

 リアンが嫌そうな顔をする。

「そのままの意味だよ。君は案外義理堅いし面倒見もいい。エリシュカも嫌なことは嫌だと言える子だ。作業場は広いからあそこを区切ってベッドを入れれば、リアンはそこで生活できるだろう。部屋には鍵もついてる。ほら、問題ないじゃないか」

 リアンとエリシュカは顔を見合わせた。問題ないかと言えば嘘になるが、行くところなく追い出されるのはもっと困る。

「私はいいわ」
「お嬢?」
「リアンさんには申し訳ないけれど、私、ここを追い出されたら行くところが無いんだもの。同居だって、構わない」
「お嬢の評判に響くだろう?」
「リアン。エリシュカは家を出てきたんだ。もうお嬢様じゃないんだよ。その覚悟はあるんだろう? エリシュカ」

 ブレイクの問いかけにエリシュカは頷く。
 
「ええ。働いて、自分の力で生きていくの。もう評判なんて関係ないのよ、リアンさん」
「いや、だって」
「あ、でも、リアンさんが困るのね。リーディエさんが嫌がるものね」
「は? リーディエはどうでもいいが」

 リアンが口ごもる。この言いぶりだと、リアンとリーディエは恋人同士というわけではないのだろうか。まあでも、リアンも年頃の男性だし、悪いうわさが立ったら申し訳ないとは思う。
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