没落人生から脱出します!
「そうだ! 私が男装すればいいのよ!」
思いついてそう言うと、リアンだけではなくブレイクまでもが驚きに目を見開いた。
「いいわけあるか!」
「また、突拍子もないこと思いつくねぇ、エリシュカ」
「でもいい案じゃない? 父の捜索が来たときも誤魔化せるし、一緒に住んでいても悪い評判は立たない。ほら、完璧じゃないかしら」
得意げに胸を反らしたエリシュカに、リアンは頭を抱え、ブレイクは笑いだした。
「確かに名案だ、エリシュカ」
「ブレイク様! 遊びじゃないんだぞ、そんなことして……」
「まあまあ、リアン。君が困らないように部屋の改装は即効でやってあげるからさ。命令だと思ってよ。僕の大事な姪っ子を守ってほしい。期限は彼女が自分で生きて行けるようになるまで。……どうだい? もちろん追加の手当ては渡すよ?」
「……そんなもん、いりませんよ」
リアンは渋い顔のまま立ち上がり、エリシュカに握手を求めて手を差し伸べた。
「仕方ない。だがルールは守ってもらうぞ」
「もちろんです。私のことはエリクと呼んでください!」
「なんでエリク?」
「だって男装するんだもの! 男の子の名前じゃないと」
「いい名前だね、エリシュカ。僕が服とかつらを買ってあげるよ」
エリシュカは差し出されたリアンの手を握る。
「よろしくお願いします。リアンさん」
これから先の生活の見通しは立たない。けれども、不思議と家を出たときよりも不安は感じていなかった。それきっと、少なくとも叔父とリアンは本当に自分の心配をしてくれていると信じられたからだ。