没落人生から脱出します!
(そうよ! 私が守らなきゃ駄目じゃない!)
リーディエは息を吸って、平静を取り戻す。
そして、火花が散っているような客とエリクの間に、落ち着いた声を投げかける。
「お客様、今、責任者を呼んでまいります。エリク、店長を呼んできて」
「いいえ。私がここに残ります。リーディエさんが行ってきてください」
エリシュカは首を振り、男をリーディエに近づけさせないよう、盾になっている。
動く気はないようだ。
リーディエの方がこの店では先輩なのだ。本来ならばこっちの命令に従うのが正しいだろう……と思うけれど、エリシュカの言葉を、リーディエを守ろうとするものだ。
リーディエの胸がむずかゆく軋む。
「分かった。すぐに行ってくるわ」
エリクの背中から目を離さないようにして、廊下に出るとまずヴィクトルを呼んだ。
「どうした、リーディエ」
「クレームのお客よ。エリクが対応しているから早く行ってあげて。私は店長を呼んでくるから」
「分かった!」
ヴィクトルが店に出ていったので、ホッとする。彼ならば口八丁手八丁でなんとでも誤魔化すはずだ。
「店長、大変です」
「なんだ、リーディエ」
二階の作業場では、木材を刻む音が響いていた。これでは階下のトラブルなど気づいてもいないだろう。
「クレームのお客が来ていて」
そう言うと、リアンは顔色を変えて立ち上がった。
「誰が対応している?」
「今はエリクとヴィクトルさんです」
「分かった」
作業場をそのままにし、リアンはリーディエを押しのけて階下へと下りて行った。
いつもなら、木材に刺さったままの鋸を外すくらいはしていくだろう。
「……なによ」
いつにない焦りを彼が見せる。それはきっと、エリシュカが心配だからだろう。悔しいけれど、リアンの態度はわかりやすい。
けれど、リーディエも前みたいに単純にエリシュカを憎めない。少なくとも彼女は、リーディエを守ろうとしてくれた。今、リアンがエリシュカを守ろうとしたように、なんの躊躇もせずに。
それが、リーディエにはうれしかったから。
リーディエは息を吸って、平静を取り戻す。
そして、火花が散っているような客とエリクの間に、落ち着いた声を投げかける。
「お客様、今、責任者を呼んでまいります。エリク、店長を呼んできて」
「いいえ。私がここに残ります。リーディエさんが行ってきてください」
エリシュカは首を振り、男をリーディエに近づけさせないよう、盾になっている。
動く気はないようだ。
リーディエの方がこの店では先輩なのだ。本来ならばこっちの命令に従うのが正しいだろう……と思うけれど、エリシュカの言葉を、リーディエを守ろうとするものだ。
リーディエの胸がむずかゆく軋む。
「分かった。すぐに行ってくるわ」
エリクの背中から目を離さないようにして、廊下に出るとまずヴィクトルを呼んだ。
「どうした、リーディエ」
「クレームのお客よ。エリクが対応しているから早く行ってあげて。私は店長を呼んでくるから」
「分かった!」
ヴィクトルが店に出ていったので、ホッとする。彼ならば口八丁手八丁でなんとでも誤魔化すはずだ。
「店長、大変です」
「なんだ、リーディエ」
二階の作業場では、木材を刻む音が響いていた。これでは階下のトラブルなど気づいてもいないだろう。
「クレームのお客が来ていて」
そう言うと、リアンは顔色を変えて立ち上がった。
「誰が対応している?」
「今はエリクとヴィクトルさんです」
「分かった」
作業場をそのままにし、リアンはリーディエを押しのけて階下へと下りて行った。
いつもなら、木材に刺さったままの鋸を外すくらいはしていくだろう。
「……なによ」
いつにない焦りを彼が見せる。それはきっと、エリシュカが心配だからだろう。悔しいけれど、リアンの態度はわかりやすい。
けれど、リーディエも前みたいに単純にエリシュカを憎めない。少なくとも彼女は、リーディエを守ろうとしてくれた。今、リアンがエリシュカを守ろうとしたように、なんの躊躇もせずに。
それが、リーディエにはうれしかったから。