没落人生から脱出します!
魔道具の暴走
 翌日、ヴィクトルが頬を赤くしてやってきた。

「どうしたんですか? ヴィクトルさん」
「……余計なこと話したって怒られた。リーディエに」

 どうやら頬を叩かれたらしい。「本当に気が強いよね、あの子」とヴィクトルが苦笑する。

「冷やします?」
「ありがとう。エリシュカは優しいねぇ」

 その発言のタイミングで、間が悪くリーディエが入ってくる。

「悪かったですね。優しくなくて」
「俺はエリシュカを褒めたんであって、リーディエのことは言ってないよ!」
「言ってなくても聞こえました。心の声が!」

 リーディエはすっかりひねくれている。エリシュカは困りながらも、水で濡らしたタオルをヴィクトルに渡した。

「同情とかいらないから! もうこの話は終わりよ」

 リーディエはエリシュカに向かってそう言う。
 エリシュカもそれ以上突っ込むことはしなかった。
 「はい!」と返事をし、朝の掃除のはじまりだ。リーディエの指示の元、エリシュカとふたり、手際よく棚や床が拭かれていく。
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