没落人生から脱出します!
開店後一時間、多くはないが何人か客が来て、お買い上げはふたり。ようやく店内が静かになり、エリシュカはヴィクトルと帳簿に客の連絡先を清書していた。リアンは二階で作業中、リーディエは棚を整えていたそのタイミングで、フレディがやってきた。
「こんにちは!」
「い、いらっしゃいませ」
また来たのか、という目で護衛を見ると、相変わらず困ったように頭を下げている。頼むからそっちで止めて欲しいものだ。
とりあえず接客にはエリシュカが当たることにした。ヴィクトルがリーディエを呼びつけ、別の仕事を頼む。
「今日はどのような御用で」
「また魔道具を見せて欲しいんだ。この間は大きな魔道具を見せてもらったけれど、小さいものってないのかな」
「そうですね……。これなんかどうでしょう」
エリシュカは棚に飾ってある腕時計を持ってきた。バンドは革製で、時計の機構自体に魔法は使用していないが、ボタンひとつで盤面を光らせることができるという光魔法を使った機構がある。
「暗くなっても時間を確認できるところがポイントです」
「へぇ。便利だね。父上にあげたら喜ぶかも! ね、ワイズ、どう思う?」
「きっと喜ばれますよ」
フレディが弾んだ声で護衛に声をかける。
聞いているエリシュカは心臓が落ち着かなかった。この会話だけでもフレディと父親の仲の良さが伝わってきて、リーディエが聞いていたら、どんな気持ちになるだろうかと考えたら、とても平静な顔をしていられない。
フレディが悪いとは、エリシュカは思っていない。リーディエが私生児なのは別にフレディのせいではないし、おそらくそんな事情も、彼は知らないだろうから。
幸せな親子なのも別にいい。だが、それをわざわざ見せないでほしい。エリシュカはこれ以上、リーディエが傷ついているところを、傷ついているのに平気なふりをしているところを、見たくないのだ。
(店員としては間違っているのかもしれないけれど、やっぱり帰ってもらおう……!)
決意して、エリシュカは顔を上げる。
「こんにちは!」
「い、いらっしゃいませ」
また来たのか、という目で護衛を見ると、相変わらず困ったように頭を下げている。頼むからそっちで止めて欲しいものだ。
とりあえず接客にはエリシュカが当たることにした。ヴィクトルがリーディエを呼びつけ、別の仕事を頼む。
「今日はどのような御用で」
「また魔道具を見せて欲しいんだ。この間は大きな魔道具を見せてもらったけれど、小さいものってないのかな」
「そうですね……。これなんかどうでしょう」
エリシュカは棚に飾ってある腕時計を持ってきた。バンドは革製で、時計の機構自体に魔法は使用していないが、ボタンひとつで盤面を光らせることができるという光魔法を使った機構がある。
「暗くなっても時間を確認できるところがポイントです」
「へぇ。便利だね。父上にあげたら喜ぶかも! ね、ワイズ、どう思う?」
「きっと喜ばれますよ」
フレディが弾んだ声で護衛に声をかける。
聞いているエリシュカは心臓が落ち着かなかった。この会話だけでもフレディと父親の仲の良さが伝わってきて、リーディエが聞いていたら、どんな気持ちになるだろうかと考えたら、とても平静な顔をしていられない。
フレディが悪いとは、エリシュカは思っていない。リーディエが私生児なのは別にフレディのせいではないし、おそらくそんな事情も、彼は知らないだろうから。
幸せな親子なのも別にいい。だが、それをわざわざ見せないでほしい。エリシュカはこれ以上、リーディエが傷ついているところを、傷ついているのに平気なふりをしているところを、見たくないのだ。
(店員としては間違っているのかもしれないけれど、やっぱり帰ってもらおう……!)
決意して、エリシュカは顔を上げる。