かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「相沢さん?」

ワイシャツの肘部分を掴んだ私を、桐島さんが不思議そうに呼ぶ。
そんな桐島さんをじっと見上げて口を開いた。

「人に話すと楽になる部分ってあると思います。この間の私がそうだったから……だから、話してください。桐島さんがそんな顔をする理由」

驚いた顔をしたあと「つまらない話だから」と笑顔でかわそうとした桐島さんに、眉を寄せる。

「この間、私もそう断ったのに強引に聞き出したの、桐島さんじゃないですか」

少し責めるように言うと、桐島さんは〝まいったな〟と聞こえてきそうな顔で笑った。
珍しく私が勝った瞬間だった。


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