かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「仕事人間だから母親なんかは寂しく思ってるかもしれないけど……まぁ、人間的にはそうかもしれない。本心は別にあったとしても、俺の進路だとかにも口出ししないで好きに選ばせてくれたし、そこは感謝してる」
「でも、どうしてその一件で川田さんが苦手に?」
今の話だと、桐島さんのお父さんが川田さんのお父さんに対して苦手意識を持った理由しかわからない。
だから聞くと、桐島さんは困り顔で微笑んだ。
「どこからか結婚話がもれたみたいで、学校中で噂になったんだよ。〝桐島と川田は許婚らしい〟って。俺としては正直どうでもよかったし、直接聞かれたら否定してたくらいだったけど、そのうちに川田に呼び出されて頼まれた。〝優しくしてほしい〟って」
「優しく……?」
しっかり聞いていたはずなのに、まったく意味がわからず眉を寄せる。
そんな私に、桐島さんが「俺もそんな反応をしたと思う」と笑った。
「川田が言うには、〝許婚って噂を信じている人もいる。その人たちから見たら自分は許婚に優しくしてもらえない可哀相な女だって思われるし耐えられない〟って。確かそんなようなことを言ってた」
「えっと……すごく周りから自分がどう見られているかを気にする人なんですか?」
朝見かけた川田さんを思い出しながら聞く。
たしかに、ピシッと背中を伸ばして歩いていたし、プライドが高そうでもあったけれど……そこまで気にするのはおかしく感じる。
本心は他にあったのかな、と考えていると桐島さんが教えてくれた。