かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
あんなに苦手だと言っていたのに、桐島さんは案外涼しい顔をして切り込んでいくから驚く。
でも、たしかに本題に移らないまま世間話をしていても時間の無駄だ。
かりに、川田さんが無理やり誘ってまでしたかった本題が告白だとして。
見る限りプライドの高そうな川田さんが、私がいる前で桐島さんに告白するとも思えないから、桐島さんの作戦勝ちだろう。
そういえば陸を訪ねて部屋にきたとき〝告白に持って行かせないようにする〟というようなことを言っていたっけと思い出した。
本題を促された川田さんは不満そうに顔を歪め……そして私を見る。
「相沢さんでしたっけ。あなたに用はないので、お引き取り頂いてもいいですよ。さっきから何もしゃべりませんし、ここにいてもつまらないでしょ?」
帰っていいならそうしたいところだけれど、チーズケーキで買収されているのでそうもいかない。
それに、引き受けた以上はこのまま途中で投げ出すようなこともできないという、わからない責任感が生まれていた。
中学の頃のあの一件があってからずっと奥に押さえ込んでいたはずのお節介な正義感が、ムクムクと起き上がった気がした。
「いえ。お気遣いありがとうございます。話の邪魔はしませんので、いないものとして会話してくださって大丈夫です」
笑顔を作った私をじっと見た川田さんが、口元にわずかに笑みを浮かべる。
バカにするような顔だった。