かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「そういうお世辞はいらないです。それに、私だって川田さんと言い合いして負けないくらいに性格が傲慢ですし」
「俺はそれくらいの子の方が好きだよ……なんて言うと、本気にとってもらえなそうだからやめておくけど」

もう声にしている時点で聞こえている。
私が困惑するような態度はやめて欲しい……と口を尖らせていると桐島さんが「今日はありがとう。相沢さんのおかげで助かった」と言ってきた。

お礼を言われじっと見つめると、桐島さんは「ん? どうかした?」と不思議そうにする。

「嘘ばっかり、と思って」
「嘘?」
「だって、桐島さんは自分でどうとでもできたじゃないですか。でも、私を連れてきた以上役割を与えないとって感じで、私に花を持たせただけですよね」

川田さんが苦手だなんて言っていたけれど、今日のやりとりを見る限り桐島さんひとりでも十分だった。

もちろん、苦手なのは本当なんだろう。でも、誰かが一緒にいないと相手にできないほどではないし、私の援護射撃なんて必要なかったはずだ。

それでも私に好き勝手言わせていたのは、私の顔を立てただけ。

じっと見ていると、桐島さんは笑みを浮かべ「違うよ」と否定した。

「俺が見たかっただけ」
「見たかったって……なにをですか?」

まさか女同士の戦いが?と思い眉を寄せていると、目を細められる。

< 122 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop