かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「私は別にそのギャップを桐島さんに見せろなんて言ってないのに、しっかり桐島さんで想像してるってことはそういうことでしょ」
図星をつかれ、思わず声を失う。
言われてみれば確かに緒方さんの言う通りで、呆れて笑っている緒方さんに何も言えずに目を逸らす。
そして、じわじわと熱を持ち始めた頬を隠すように手の甲で覆うと、それを見ていた緒方さんは目をパチパチとさせて、信じられないものでも見ているような顔で言う。
「え、なに、もしかして今自分の気持ちに気付いたの……? 今? ここで?」
「もしかしたら、とは思ってたんですけど……本当にそうなんだって思ったのは、今、緒方さんに指摘されて、です」
なんだか堪らなく恥ずかしくなって顔を手で隠したまま目を伏せる。
そんな私に、緒方さんは「ええ……」と力の抜けた声を出しながら、私の背中をポンポンと撫でた。
「ギャップ、私より使いこなしてるんじゃない? ここに男がいたら絶対に堕ちてたのに。惜しいことしたわね」
本気で言っている様子の緒方さんに「そういうのはいりません」とボソボソ言う。
緒方さんは「はいはい。桐島さんだけでいいんだもんね」と明るく笑っていた。
そうか。私は桐島さんが好きなんだ、と気付かされた気持ちに戸惑うも、なんだか悪い気はしなくて変な気分だった。
これが恋なのかとか、そこまで熱く燃えてないけど大丈夫なのかとか、色々思う事はあるけれど。
心の中に当たり前のように桐島さんの居場所がある自分に気付く。
トクン、と鳴る鼓動が心地よくて少しだけ照れくさかった。