かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「もしかしたら嫌われちゃったかな」
「……やめてください。そういう演技はずるいです」
いかにも傷つきましたと言わんばかりの態度は、いくら初恋の対処法がわからず困惑しっぱなしの私でも、演技だとわかった。
だから口を尖らせると、桐島さんがおかしそうに笑う。
その顔に、こっそり胸を締め付けられながら口を開いた。
「桐島さんって、私のことからかって遊んでますよね」
前々から思っていた不満を告げる。
桐島さんは「そういうわけではないよ」と否定した後で続けた。
「俺の性格が悪いってことは最初から言ってあっただろ?」
「そうですけど……それを最近、よく実感するなって」
桐島さんの言う通り、うちに初めて訪ねてきた時に桐島さん本人が言っていたし、実際その頃からダークな一面はあったと思う。
でも、それにしたって最近はよく人の気持ちを探るような発言だとかが多い気がする……と思っていると、桐島さんが言う。
「それは最近、相沢さんの反応が変わってきたからだよ。嬉しくて、ついからかいたくなる……なんて言うと、小学生男子みたいで嫌になるけど」
まさに、今のこれが私が問題としている発言だと言いたくなったけれど、その文句は喉の奥に押し込める。
こんな会話を掘り下げたりしたら、私にとってもよくないと気付いたからだ。
きっと私だけがダメージを与えられてひとり焦ったり困ったりするのが目に見えている……と考え、そういえば桐島さんのそういうところを見たことがないと気付く。