かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「そのイメージで合ってるよ。今の仕事は俺自身がやりたいと思い描いていたことの延長線上にあるから、相沢さんの言う通り充実してる。俺はクライアントに出向く機会も多いし、それがいい気分転換にもなってるから……完全なデスクワークの相沢さんの方がストレスだとかは溜まりやすいかもね」

微笑みの中に、私への気遣いを滲ませた桐島さんを見て、「そんなことは……」と言いかけてから、そういえばと思い出す。

「あの、川田さんと一緒にお店に行った時、はっきりと進路を決めたきっかけがあったって言ってましたよね。高二の冬……でしたっけ。そのきっかけがなんだったのか聞いてもいいですか?」

桐島さんの仕事である投資アナリストは、結構特殊だと思う。

私も就職するまでは銀行内にそんな部署があるなんてことすら知らなかったくらいだし、普通の企業に勤めている人も、経営に携わっていなければあまり関わる機会はない。

それなのに、どうして桐島さんが投資アナリストに興味を持ったのかが気になったから聞いたのだけれど、桐島さんはふっと笑みをこぼし「そのうち教えてあげるよ」とだけ言った。

つまり、今は言いたくないという意味だ。

「すみません。無理に聞き出そうと思ったわけじゃないので……」

やんわりとだけど断られてしまい、もしかしたら踏み込みすぎた質問だったのかもしれないと思い謝ろうとした私に、桐島さんはすぐに首を横に振った。

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