かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


『相沢さんの初恋は実ったのね。不平等だわ』

そう、やや不満そうに言った川田さんには、本当のことは言えず、曖昧な笑みしか返せなかった。

その翌日だった。

「そういえば、今日の夜、桐島くるから。夕飯なんの予定? 桐島が合うものを適当に買ってきてくれるってメッセージきてるんだけど」

私が帰宅すると同時にそう言った陸に、靴を脱ごうともぞもぞしていた足が止まる。

「え、今日って、これから……?」

玄関に立ったまま聞き返すと、陸は当然のように「そう」と答えた。

これから、桐島さんがここに来るの……?

咄嗟に頭に浮かんだ感想は〝困る〟だ。
昨日、川田さんと別れてから、いい加減桐島さんに連絡しないと……と思ったものの、実はまだできていない。

そんな私に業を煮やして陸に連絡したんだろうか、なんて考えるのはうぬぼれすぎだ。ただ単に、友達の陸と話がしたかっただけという可能性だってある。

桐島さんは多忙だし、私が連絡を返さないことなんて頭の隅にも留めていないかもしれない。

そうは思うけれど、さすがに桐島さんと顔を合わせるのは気まずく感じ、脱ぎかけていた靴を履きなおす。

「そうだった。今日、約束があったんだった」

今、思い出したように言うと、陸が「あれ、そんな話してたか? 誰と?」と聞いてくる。


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