かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「付き合うよ。相沢さんは綺麗だし、ひとりだとその辺の男が放っておかないだろ」
「そんなことないので大丈夫です。帰り道も比較的明るいですし……」
「いいから。それにこのまま帰したら俺の方が気になって眠れないから。俺のためだと思って折れてよ」
強引に押し切られ、苦笑いでうなずく。
正直、夜道をひとりで歩くよりも、たいして知らない酒井部長とこれからの二十分を一緒に過ごす方が嫌だけれど、これ以上断るのはさすがに失礼だ。
親切心からだろうし、と思い、こっそりとため息を落としながら隣に並んだ。
電車に乗り、マンションの最寄り駅で下りる。
電車の中でも、マンションまでの道上でも、話題は酒井部長の趣味だというスポーツジムについてだった。
トレーナーのいるジムに週に三度通っていて、体を鍛えているらしい。
トレーニングは筋トレが主で、その成果は体脂肪率だけでなく見た目にも現れるから楽しいというので、ただ「すごいですね」と相槌を打った。
酒井部長の話に、愛想笑いを浮かべてただ相槌を打ち続けているうちにマンションが見えてきたので足を止める。