かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
私は今、自分の気持ちを守ることに割と精一杯な状態だ。
生まれたばかりの恋心をどう扱ったらいいのかがわからず、持て余している。触れ方も、力加減もわからなくて右往左往状態。
おおげさでなく、私の内側は今、戦場だ。
慣れない気持ちを抱えて困惑するあまり気も立っている。
そんなところを誰かに踏み入れられたりしたら臨戦態勢に入って噛みついてしまうかもしれない。たとえそれが桐島さん相手でも。
私の、素直になれない性格上、余計にその可能性が高い気がして……だから、落ち着くまで距離を置きたい。そっとしておいてほしい。
これは、川田さんと三人で会った直後くらいから思っていた願いなのに、一向に叶えられることのないまま今日まできた気がする……。
偶然が重なり、そう日を空けず桐島さんと顔を合わせてしまっている現状に落ち着かない気持ちになっていると紗江子が笑う。
「まぁ、初恋だもんね。私も初恋自覚直後なんてそんなもんだったかも。もう昔すぎて思い出せないけど」
「紗江子の初恋っていつだったの?」
「ちゃんとした初恋は小三とかかなぁ。幼稚園の頃から好きな子はいたけど、それはちょっと違う気もするし」
〝小三〟〝幼稚園〟の単語に思わず「早熟……」とこぼすと、呆れたように笑われる。