かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「私、そんなことしてません」
「してるよ。故意か無意識かは別にしても、会ってから今までずっと、俺を振り回してる」

言い切った桐島さんが、私を見て非難するように目を細める。

一方の私は、告げられた言葉の意味を理解するまでに時間がかかり、少しの間キョトンとしてしまっていたけれど……そのうちにだんだんともやもやした怒りが湧いてきて、桐島さんを睨むように見上げた。

「人のことを振り回してるのは桐島さんの方じゃないですか。思わせぶりな態度ばかりとって、なのに肝心なことは言わないで……そのせいで私がどれだけひとりで悩んだと思ってるんですか。っていうか、現在進行形で頭抱えっぱなしですし」

強い口調になった私に、桐島さんは心外とばかりに顔をしかめた。

「俺は相沢さんに思わせぶりな態度をとったことなんてないよ」
「とってます。何度も何度も……抱き締めたり、手を繋いだり、桐島さんのそういうところに振り回されてるのは私の方ですから」

「俺は相沢さんを振り回してはいない。相沢さんが俺に気があるような態度ばかりとって振り回してるんだろ。曖昧に受け入れられて、立ち位置に困ってるのは俺の方だよ」

不満の滲む声で言われ、カッとなる。

「絶対に私の方です! 桐島さんが遠回しに遠回しに私を好きみたいなことを言ってくるから気になって仕方なくてひとりでわたわたして……っ」

「好きだよ」

ヒートアップした私を止めたのは、桐島さんのひと言だった。

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