かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
少し怒っているようにも見える桐島さんが発した言葉に、時間まで止まったような錯覚に陥る。
私があんなに騒いでいたのに、桐島さんの告げた四文字はしっかりと、聞き間違いだなんて思えないほどハッキリと耳に届いていて……頭が真っ白だった。
「好きって……」と誰にも聞こえないような声を漏らしてから……ようやく周りの景色が見えだす。
一瞬にして静まり返った公園。
池の水面を風が撫で、木々を揺らす。
私をじっと見つめる瞳は嘘をついているようには思えなくて、告げられた言葉が頭のなかで繰り返されるたびにじわじわと内側から私に浸透していき……実感すると同時に涙が浮かんだ。
それが目から溢れるのを感じた途端、ここ最近ずっと拭いきれずにいたものの正体に気付く。
そうか……私は、この言葉を待っていたんだ。
桐島さんに、好きだって言って欲しかったんだ。
距離を取りたかったんじゃない。
落ち着くまで放っておいてほしかったわけでもない。
ただ、好きだって言ってほしかったんだ。
自分が本当に欲しかったものに気付き、それがストンと胸の真ん中に落ちる。
目一杯張りつめていた気持ちがその衝撃で溢れると、それが涙となって形になった。
唇を噤んだままポロポロと泣き出した私に目を見開いた桐島さんは、一歩近づき涙を指の背で拭ってくれる。
触れた指先の熱に胸が高鳴った。