かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「そんなに驚かなくても、俺の気持ちには相沢さんだって少しは気付いてただろ? 俺は気持ちを隠そうとはしなかったから」
驚いて泣いていると勘違いしている桐島さんをじっと見上げた。
「気付いてました。だって桐島さんは本当に気持ちを隠さなかったから、もしかして……ってずっと期待してたんです。期待して……桐島さんに好きだって言ってもらえるときを、私、ずっと待ってたんだって、今、気付きました」
桐島さんから与えられる、確信までは与えてくれない甘い香りのする言動。
それはまるで、誰宛かわからないプレゼントだった。
桐島さんと私の間にあるテーブル上に置かれた、綺麗にラッピングされたプレゼント。
桐島さんはにこにこしながら私を見つめてくるのに、そのプレゼントが私宛だとはいつまで経っても言ってくれない。
私は、桐島さんとの会話を楽しみながらもずっと目の前にあるプレゼントの存在が気になってしまって焦らされていた。
本来の私だったら……そして、相手が桐島さんじゃなかったら、すぐに〝これなに? 誰の?〟と聞くところだ。
でも、今回だけはそれができなかった。
手を伸ばしていいのかわからなくて困っていたし、なにも言わない桐島さんにも戸惑っていた。
それは、私が手を伸ばしたいと、欲しいと思っていたからだ。
今まで過ごしてきて、初めて欲しいと思ったものだったから……動けなくなっていた。
今思えば、まったく私らしくなくて笑いそうになる。
でも、初めての恋なのだから仕方ない。
じっと見つめて告げた私に、桐島さんは少し驚いたような顔をしたあとで、ふっと表情をやわらげた。