かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「待たせてごめん。相沢さんは少し男に苦手意識があるみたいだったし、あまりガツガツいって怖がらせたり嫌われたりするのは避けたかったから、徐々に距離を縮めようと思ってたんだ。急に気持ちを見せたら驚かせるかもしれないから、ゆっくり気付いてくれたらって……でも、そのせいで曖昧な態度になって悩ませたのかもしれない。まさか待っててくれているなんて思わなかった」
私の頬を、大きな手が包むように触れる。
ようやく収まった涙が、瞼のふちでゆらゆらと揺れていた。
「ごめんね」と、申し訳なさそうな微笑みで桐島さんが言う。
そんな顔で謝られたらなんでも許したくなるのをわかっていてやっているのだとしたらズルい……と、むくれたくなっていると唐突に告げられる。
「相沢さんが好きだよ。だから、他の男との噂なんか聞いたら冷静じゃいられないし、俺しか見えないようにしたくなる」
私だけを映す瞳に、鼓動が跳ねた。
ドクンドクンと鳴り響く心音に体を震わせながらなんとか見つめ返していると、桐島さんが再び口を開いた。
「手を繋いだのも、抱きしめたのも、全部俺を意識させたかったから。どこまでなら許してくれるだろうって思ってたけど、俺がなにしても相沢さんは戸惑いながらも受け入れてたから、少し心配になった。強引な男が現れたら横から奪われるかもしれないって」
困ったように微笑む桐島さんに、口を尖らせる。
「簡単な女だって思われたのかもしれないですけど、それは桐島さんだったからで……誰が相手でも許すわけじゃありません」
見くびられた気がして眉を寄せた私に、桐島さんが表情をほころばせる。
それがあまりに嬉しそうで、目を奪われた。