かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「それを言うなら、俺の方が早い段階で相沢さんを好きになったぶん、長く焦らされてるし、〝おあいこ〟ではないよ」
「でも、そもそもきちんと話すようになったのって一ヵ月前ですし、どっちが先だとかそんなのはもう誤差……」
何年も前から想いを寄せていたとかならともかく、たった一ヵ月間でどっちが先に好きになったなんていうのは関係ない。
そう言いたかったのに、突然重なった唇にそれ以上言葉がつながらなくなる。
目を閉じる間もなくキスされた私には、目の前の桐島さんの整った顔も、数秒後離れた桐島さんがゆっくりと目を開け私を確認するように見つめるところも、全部を目撃してしまい……一連の流れがまるでスローモーションに見えた。
恥ずかしさよりも、驚きが勝ち、なにも言えなくなっている私にまだ至近距離にいる桐島さんが聞く。
「返事は?」
「返、事……?」
「俺のこと、どう思ってる?」
聞きながら、またキスされる。
今度はさすがにハッとして突っぱねるように胸を押したけれど、桐島さんの作る甘い雰囲気にのみ込まれ、抵抗する腕に力がはいらない。
こういう行為に慣れない私をなだめるように軽く触れては離れるを繰り返す唇に、次第に気持ちが流されていくのが自分でもわかった。
恥ずかしかったり緊張したりはするけれど、嫌じゃないから……本気で拒めない。