かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


けれど、次の瞬間には、両手は私を離さないまま熱のこもった瞳で見つめ「相沢さん。返事は?」なんて聞いてくる。

観念した私が「好きです」と告げた声はとても弱々しかったものの、公園が静かなことと、至近距離からだったおかげで無事桐島さんの耳に届いたようだった。

意地の悪い告白の催促をされたと思うのに、満足そうに微笑む顔を見たらそんな文句も消えていくのだから……恋は厄介だ。

「やっと捕まえた」

私を抱き寄せ耳元でそうつぶやいた桐島さんの声に、必死に抑えようとしていた鼓動がドクンと大きく跳ねてから高速で刻み出す。

今、心音を折れ線グラフみたいな形に表す心電図をとったら、きっと用紙に収まらず突き抜けると思う。

トクトクと小動物並みに跳ねる鼓動は苦しいし、頭の中だって思いきり混乱しているのに。
それでも、桐島さんの腕の中を心地よく思うのだから不思議だ。


桐島さんの肩越しに、水面に映った月が見える。
またじんわりと浮かんできた涙を隠すように、ゆっくりと目を閉じた。



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