かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「え、私……?」
「当時中学一年生だった相沢さんが、『さっきから聞いてるけど完全な八つ当たりじゃないですか』って」
〝八つ当たり〟
それは、さっき私が言った言葉そのままで、だからさっき桐島さんは笑ったのかと納得する。
「『この人にそれを言ってどうしろって言うんですか? なにも悪くないこの人に謝れって言うんですか? こんなことしたところで後から自分が恥ずかしくなるだけでしょ』って。あまりに威勢よく突っかかっていくから心配になるほどだった」
困ったように微笑む桐島さんに言われ、当時のことを思い出した。
まだ、私が率先してもめ事に首を突っ込んでいた頃の話だ。まだ……あの痴漢の一件が起こる前の話。
公園で揉めている高校生を見かけて、しかもそれがかなり一方的だったから堪らず割って入った覚えがある。
あの時の男子高校生が桐島さん……?と思い出してみようとしたけれど、残念ながら記憶にあるのはぼんやりとした会話や場の雰囲気だけで、顔立ちまでは覚えていなかった。
「出来事は覚えているんですけど……すみません」
「いや、仕方ないよ。俺も逆の立場だったらきっとここまで鮮明に覚えていなかったから」
そう笑った桐島さんが続ける。
「年下の女の子に責められた先輩はバツが悪くなったのかそのまま帰っていった。そのあと、お礼を言ったら相沢さんは気に入らなそうに『悪くないのに我慢するのはよくないです』って言ってた」
「……すみません」