かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「企業の経営が安定するような手助けをしたいと思って、投資アナリストになった」
「そうだったんですか……?」
「父親が医者だったから、なんとなく自分も医者になるのかと思ってた。でも、改めて未来を見据えたとき、違和感を覚えた。もしかしたら、俺の性格的にも医者よりも企業を立て直す手助けをする方が向いているかもしれないって思った。相沢さんに言われてそれに気付いて、高三の春には進路を変更した」

感情が顔に出ていたんだろう。
黙っている私を見て「意外だった?」と桐島さんが聞いてくるのでうなずく。

「だって桐島さん、自分で自分のことを冷たいだとか打算的だって言ってたから……」

困っている企業を手助けする、というのが今更ながら合わない気がして腑に落ちない。
そんな私に、桐島さんはおかしそうに笑った。

「そうだよ。打算的で冷たい。だから、なにに対しても感情は横に置いてシビアな判断が下せる。企業を助けたいという正義感で動いているというよりは、単純に市場分析して投資方針を決定して、予測した収益を形にする過程が楽しいからっていうのが大きいかもしれない」
「なるほど……」
「それに俺だって誰彼構わず切り捨てるわけじゃないよ。努力している相手には、手を差し伸べて、元いた場所かそれ以上の場所まで持ち上げたいって気持ちはある。もちろん、経営者がどうしようもない人間だったら適当なところで見切りをつけるけどね。部長には極端だってよく言われる」


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