かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
そう笑う桐島さんの表情からは自信が見て取れて、仕事が充実しているんだろうなっていうのが伝わってきた。
川田さんへの態度を目の当たりにしたり、今までの桐島さんの考え方だとかを聞いたりしていると、完全な善意や正義感から誰かに手を貸すというのが彼と一致しなかった。
けれど、今話を聞いて納得した。
たしかに、桐島さんの言う通りだ。
それに、桐島さんだって誰に対しても打算的だったり冷たいわけではない。
陸や……それに、私にはとても情を持って接してくれている。
〝誰彼構わず切り捨てない〟っていうのは、しっかりと相手を見て判断しているということで……なんだか昔の自分に聞かせてやりたくなった。
たぶん、本当の優しさだとか親切はそういうことだ。
私のあれは、ただの押し付けの自己満足だ。
そんなことを今更実感し、静かに納得してから桐島さんを見る。
「でも、いつ私に気付いたんですか?」
昔、公園で会った時は連絡先も交換せずに、自己紹介すらしないで別れたはずだ。
あれから十年以上経っているのに……と思っていると、桐島さんが教えてくれる。
「相沢さんの通学カバンを見て、名前は知ってたんだ。でも、それ以外はなにも知らなかったから再会は諦めてた。俺自身、大学進学して就職してって過ごしていくうちに記憶からは薄れていったし」
そこで一度言葉を切った桐島さんが、視線を伏せ微笑みを浮かべる。