かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
サバサバした性格のつもりでいたけれど、桐島さんを好きになってから気付いた新たな一面がある。
それは、案外恋愛に対して乙女だということだ。
好きだって自覚しただけで桐島さんと顔を合わせるのが恥ずかしくなったり、メッセージの文章が変じゃなかったか何度も起動させてあとから確認したり、もっと言えば、桐島さんの前で食事をとるのも少し恥ずかしいし、こっちを見ないで欲しいとさえ思う。
しかも恐ろしいのが、今言ったのはたった一部でしかなくて挙げればキリがないってところだ。
それなりに恋愛をしてきた大人の男性からしたら、私のそういう恋愛慣れしていない部分は面倒でしかないのはわかった。
だから言うと、桐島さんはキョトンとした顔をしたあと、ふっと表情をやわらげた。
「そう思われているなら心外だな」
距離を詰めた桐島さんに、突然キスされる。
なにもわからないままされたキスに、ただ瞬きを繰り返していると、桐島さんが私の頬に触れる。
顔が、近い。
「とりあえず、相沢さんにそのへん信頼されるように頑張るよ」
もう一度キスした桐島さんが、その途中で「澪って呼んでもいい?」と聞く。
キスしながらの会話なんて私には難しくて、なにを言われているのかが理解できないまま、でもなにかを問われたのはわかったので、うなずく。
唇が触れる感覚にも、床の上で重なったままの手の熱にも、桐島さんが作り出す甘い雰囲気にも、すべてにドキドキしてしまい頭の中はパニックだった。
柄じゃないけれど、わーわー叫びたくなるほどに困惑していた。