かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「陸の心配事が減ったならよかった」と桐島さんが笑う。

さぁ……っと木々を揺らす風が吹き抜ける。
前を見ると、もうそこはスタートした場所だった。どうやら一周したらしい。あっという間の二キロだったな、と考えながら桐島さんを見上げる。

「どうしますか? もう一周回ります? それともアトラクションの方に行ってみますか?」

ジェットコースターの走行音や、ワーキャーとはしゃぐ声が聞こえるから、アトラクションゾーンもここからそう離れていないんだろう。

入園の際にもらったパンフレットをバッグから取り出し広げると、桐島さんが横から覗き込んでくる。

「じゃあ、お昼頃までアトラクションのエリアを回ってみて、お昼を食べながらそこからの予定を決めようか。澪が動き足りなかったらまた歩いてもいいし。……ああ、この辺りなら景色も変わっていいかもしれない」

桐島さんが指したのは噴水のあるスペースで、人工の川が流れており、その川沿いに歩道があると書かれてた。

せっかく気合を入れてストレッチのスキニーを履いてきたし、どうせパーク特有の楽しい雰囲気に流されてクレープやらアイスやら甘いものに手を伸ばしてしまうのは目に見えているから、食後はカロリー消費に少しでも歩いた方がいいかもしれない。

そんな風に考えていると、桐島さんが言う。

「ただ、あまり疲れすぎないようにね。帰り、俺の部屋に誘う予定でいるから」

微笑んで告げられた言葉に、わかりやすく体が固まってしまい……そこからはせっかくの遊園地なのに、先の予定が気になりすぎて素直にはしゃげなかった。


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