かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「余裕が出てきたっていうのもあるし……まぁ、他の理由はおいおい話すよ」
はぐらかされ、あれ?と思う。
そういえば、今日は遊園地で散歩している時にもなにかをはぐらかされた気がするけれど、なんだったっけ。
すぐに思い出せないのだからたいしたことではないにしても、同じように部屋関連だった気がして少し気になった。
「座ってて」と言われ、ソファに腰掛ける。
向かいの壁には壁掛けの液晶テレビがあり、うらやましく思う。
うちのテレビは壁掛けじゃないから場所をとる。テレビ台はしょっちゅう埃が溜まるし、私も今度引っ越すなら、壁掛けできる部屋がいいなぁとは思うものの、予算的に難しそうだ。
そんなことを考えているうちに、グラスをふたつ持った桐島さんが隣に座る。
「ミルクはいる?」
桐島さんが入れてくれたのはアイスティー。背の高いグラスに黒いストローが刺さっていた。
「いえ。このままで大丈夫です。ありがとうございます。……あの、運転も全部してもらっちゃってすみませんでした」
片道一時間弱かかったし、高速にも乗ったからきっと疲れただろうと思い言う。
でも、桐島さんは笑顔で首を横に振った。
「いや。運転は好きだから気にならないんだ。車内の空間が好きで、たまにひとりでもドライブしてる。ストレス発散みたいなものかな」
「そうなんですね。そういえば車、ピカピカでしたもんね」
「気に入って買った車だからね。できるだけ長く乗れるようにとは思って大事にしてる」