かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「大事にするのは大前提だよ。そうじゃなきゃ、こんなに必死に欲しがらない」
私が隠した、いかにも女の子みたいな本音は、桐島さんにしっかり伝わってしまったようだ。
一気に変わった雰囲気に戸惑っているうちに、再び唇が重なる。
もう何度もしたキスなのに未だに慣れず呼吸を震わせていると、桐島さんはそんな私を愛しそうに見つめ「可愛い」と呟くように言う。
照れるだけだからやめて欲しいとは思うものの、胸は素直にキュンと締め付けられる。
やっぱり……恋は矛盾ばかりだ。
私をベッドに下ろした桐島さんが「怖くない?」と聞くので、少し考えたあと首を横に振る。
「怖くはないです。ただ……すごく恥ずかしいので、できたら脱がさないでくれませ……」
「ごめんね。それは無理かな」
「じゃあ、あまり見ないでくださ……」
「それも無理だよ」
それ以降、私がそれは嫌だとか、そこはもうやめて欲しいだとか、何度訴えても全部「ごめんね。無理」で続行されることとなった。
おかげで長い時間をかけてグズグズに溶かされた体は、桐島さんの指や唇、舌にいちいち過敏なほど反応するようになってしまい、それは普通だったら恥ずかしいほどだったと思う。
でも、思考回路までとろけているせいで羞恥心が鈍くなっているのが、せめてもの救いだった。
「ん……っ」
桐島さんを受け入れる際に感じた痛みが和らいできた頃、はー……となにかに耐えるような息をついた桐島さんが、私の頭を撫でる。
おでこに張り付いた前髪を避けてくれる手は私よりも熱かった。
至近距離にある整った顔が目に毒なほど色気を含んでいるので、体の奥が鳴いた。
交換する呼吸までもが甘く感じ、どんどん体温が上がっていく。
桐島さんの乱れた吐息も、滲む汗も、全部が嬉しい。