かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
翌週月曜日。休憩スペースで四人掛けのテーブルに紗江子と座る。
私の右斜め前に座った紗江子の前にも私の前にも、同じカルボナーラが並んでいた。
さっきコンビニで買ってきたものだ。
時間は十三時二十分。遅めのランチだからか、休憩スペースの席は六割方空いていた。
食事を進めながら、一昨日桐島さんから聞いた話をすると、紗江子が驚く。
「へぇ、縁談とかあるんだ」
「今まで二回持ち掛けられたことがあるって言ってた。遠田常務から〝姪っ子とどうだ〟って言われたときには断るのが大変だったみたい」
〝遠田常務〟の名前に反応したのか、紗江子が同情するように顔を歪める。
「そりゃそうだよ。そんな上から打診されたら断りにくいもん。でも、そういうことならたしかに公認の仲になっておいた方がいいかもね。仕事以外で気を揉むのって嫌だろうし」
「……そうだね。桐島さんはそういうタイプかも」
案外シビアなところがあるから、仕事をしにきている場所で、それ以外のことに時間を割くのは嫌いそうだ。
今の仕事はやりがいがあって楽しそうだし、公認の仲になることで桐島さんの負担が減るなら……とも思うけれど、それでも気分は憂鬱だった。
だって、あれだけ誰とも噂にならなかった桐島さんが相手だ。
桐島さんが考えを変える気がないのはわかっているから、私も諦めてはいるものの、落ち込む気持ちは止められない。
まぁでも、それも一ヵ月の辛抱だ……と考えて割り切ろうとしていると、紗江子が私の顔色を窺うように見ていることに気付いた。