かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「どうかした?」
「んー……いや、あのね、ちょっと相談があってさ」
珍しく言いにくそうにしている紗江子を不思議に思い見ていた時、隣の椅子が引かれる。
私の隣、つまり紗江子の向かいの椅子に手をかけたのは、桐島さんだった。
「座ってもいい?」と聞かれ、うなずきそうになってから紗江子に視線を移す。
相談があるって話だった。
そのままうやむやにするのも嫌だったのだけれど、意外にも紗江子は笑顔で承諾する。
「どうぞどうぞー」と桐島さんに言った紗江子が私に視線を移す。
「大丈夫。むしろ桐島さんにも一緒に聞いて欲しいから、陸を通して私が呼んだの。十三時半頃来て欲しいって」
知らないうちにセッティングされていたことに少し驚きつつも、紗江子の相談内容について考える。
桐島さんも交えて話したい相談ってなんだろう。
紗江子はひとり覚悟を決めたようにコクリと小さくうなずいたあと、私を見た。
「あのね、陸と同棲しようかなぁって思ってるの」
「え……っ」
「ほら、一ヵ月ちょっと前に、仕事でミスして〝もういっそ寿退社しちゃいたい!〟みたいなこと言ったでしょ? あれ、陸にも同じように愚痴ってて、そしたら陸が『まず同棲するか』って」
「ああ……土田さんにすごく怒られてたとき……」
たしかにそんなことを言っていたのは覚えている。
でも……あれは一ヵ月半くらい前の話だ。だとしたら……。