かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「え、待って。もしかしてこの一ヵ月半、私のせいで足踏み状態だった?」
陸も紗江子も思い立ったらすぐ行動のタイプなのに、この一ヵ月半でなにも動いていないのは、私に気を遣ったからかもしれない。
今、陸と私は同居状態だし、急に陸が出て行ってひとりで家賃を払うことになったら私が困るから、だからなかなか言い出せなくて……?
申し訳なさでいっぱいになって謝ろうとした私を、紗江子が止める。
「違う違う。そうじゃなくて、私が言うタイミングを計ってただけなの。ほら、澪、ここ最近色々あったし。正直、陸との同棲話進めるよりも澪に降りかかるあれこれを見て、ああだこうだ言ってる方が楽しかったし」
「……そうなんだ」
もしかしたら、私に気を遣わせないようにっていう嘘かもしれないとは思いながらも、紗江子の性格を知っているだけに、一応は納得して引き下がる。
でも、陸も陸だ。
あんなに桐島さんとのことや黒田のことを気にして、私に色々カマをかけてきたりする暇があったなら相談してくれたらよかったのに。
だけど……そうか。同棲か。
ふたりのことは、付き合い始めた頃から見てきただけに、なんだか感慨深くて思わず「同棲するんだ」と呟いた私に紗江子が笑顔を向けた。
「うん。でも心配しないで。澪の引っ越し先もきちんと考えてるから」
「え……いいよ。大丈夫だよ。そこまでしてもらわなくても、自分で探せるから。今日帰ったらとりあえずネットで探……」
私が言いきっていないのに、紗江子が「そんなわけにはいかないよ」と割り込む。