かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「澪って、自分で思ってるほどしっかりしてないし、実を言うとひとり暮らしさせるのは不安なんだよね。ちなみにそこは陸も同意見だった。だから、陸とふたりでお願いしてちゃんと新しい部屋決めたから大丈夫。ふたつ返事でオッケーもらっておいたし、今月半ばには引っ越せるよ」
「今月半ばって……え?」
今日は十月五日で、半ばまでに引っ越しができるってことは、もう部屋が決まっているってこと? 私の意思関係なしに?
どこに引っ越しさせられそうになっているのか、急に不安になる。
紗江子は私をしっかりしていないと言ったけれど、それは、陸にも紗江子にも当てはまるし、軽率な行動をとるのはどちらかと言えばふたりの方だ。
信頼していないわけではないにしても、私抜きで行われていた私の引っ越し計画にじわじわと恐怖を感じていたとき、ハッとする。
『ふたつ返事でオッケーもらっておいたし』という紗江子の言葉と、どうして桐島さんがここに同席しているのかという疑問が、うっすらと繋がった気がした。
ゆっくりと視線を移すと、桐島さんが待っていたようににこりと笑う。
「今のマンション、間取りがいくつかあるんだけど、俺は単身者用のワンルームに住んでるんだ。でも、別フロアに2LDKの部屋がひとつ余ってるらしいから、そこで考えてる。もちろん、立地だとか雰囲気を見て澪が気に入らなければ他を探すから安心してほしい」
あまりの展開の速さについていけない私に、桐島さんが続ける。